正しいより楽しいこと

野外保育「まめのめ」の運営母体であるNPO法人子どもへのまなざしでは、立ち上げから毎年、子育て真っ最中の人、そして子どもの育ちに関わる人すべての人と共に今を生きる子どもにとって本当に大切なことを考える『親育ち講演会』を開催してきました。

12年前、子育て真っ最中だからこそ安心できる場所で仲間と一緒に学びたい!当時のまめのめの母たちの想いでプレーパーク「なかだの森であそぼう!」で開催し始めた講演会。
年を重ねるごとに、どんどん参加して下さる方も増え、200人近い時もありましたが、「いつものあそび場で子どもを遊ばせながら、なるべく子育て真っ最中の方が聴きやすい」講演会を目指したいという想いはずっと変わりません。
そして、毎年「今、子育て中の皆さんとこの方のお話を聴きたい!!」と熱い想いを持って講師の先生にお願いしてきました。

毎年、講演会を開催するたびにたくさんの感想を頂きます。感想を読むだけで胸が詰まる気持ちになり、その方と同じ時間を過ごせたことを私も幸せに思える気持ちになりました。
そして、私もこの1年に1回のこの講演会が、自分の子育てや生き方の軸を確認する大切な時間になっていました。

ですが、今年度、新型コロナ感染の再拡大に伴って、講演会の開催を初めて断念することになりました。
今年度は、こんな時だからたくさん泣いてたくさん笑おう!と、柴田愛子さんの講演会を予定していました。きっと今回も、たくさんの方が愛子さんの言葉に勇気づけらるに違いないと、オンラインの講演会に変更することも何度も考えましたが、同じ場所でお互いの空気を感じながら講演会を開催したい、と中止を決定しました。
来年以降、また必ず講演会を開催したいと思っています。

実は今年度の講演会が開催されていれば、当団体では愛子さんをお招きするのが3回目となっていました。愛子さんはいつも、子育てする親としてだけでなく、「あなたはどう生きたい?」と、明るくパワフルに問いかけてくださるように感じます。

今回は5年前に柴田愛子さんが講演して下さった時に、当時のまめのめのお母さんがとても丁寧に気持ちを書いてくれた感想をご紹介します。

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『正しいより楽しい』

「ママ、何で泣いてるの?」
柴田愛子さんの講演会中、子ども達に何度も大きな声で言われた。周りの方々の温かなクスクスを受け赤面しつつ、初めてお目にかかった愛子さんのお話に一瞬で引き込まれた。
「子どもっておもしろい!」沢山のエピソードを折り込みながら心からそう語る愛子さんは、「好きだからやっているんだ」ということを力強く感じさせた。
 こんな大人の人に子どもの頃出会えていたら、どんなに救われただろう…
 思い出したくもないけれど、私の家はとても厳しくて、常識・礼儀作法、決して人に迷惑をかけるなと一貫して教えこまれた。出来なかった時には人前でも手が出たし、朝まで続くお説教も度々。自尊心なんてもうなくなって。「全てお前のためなんだ」「親になればお前にも分かる」という言葉を受け入れるしかなかった。出来ない自分を攻めながら、反抗期もなく大人になってしまった。

 「ツマンナイこと、気にしなくていいよ!」もし愛子さんにもっと早く出会えていたら、気付かせてくれたに違いない。守ってくれたに違いないのに…。
 そのまま「人に迷惑をかけないこと」がベースの人生となってしまった私の子育ては苦しかった。外へ行けば他人の目が気になりすぎて謝ってばかり。すみません、すみません…我が子は愛しいのに、叱ることが増える。
 ある日、私の母に子どもが褒められていた様子を横で見た時、嬉しさでなく「怒られなくて良かった…」と安心する自分にハッとした。子どものために頑張っていたはずの自分に違和感を感じ始め、不安になった。怒られたくないのは、誰?
この子育て、本当にこの子のためになってる?
自問自答した。

 「全てお前のためなんだ」あの日の言葉が蘇る。
未だに「親の言うことを守らなければならない自分」を見つけてしまった。怒られたくなくて、未だに私、怯えてる…
 親になってもあの厳しさは理解できないことだらけなのに、私、同じようにしちゃうかもしれない…。怖い…。どうしたらいいのか分からず不安にもがきながら新しい道を、変われるキッカケを探した。
 そんな矢先に出会えたのが「なかだの森」。初めて訪れた日、吸い込まれるように娘は走りだした。息子は顔から泥へ入り見たことのない顔で笑った。
 それを周りの人たちは元気だねーと普通に受け入れ、寄り添い、一緒に笑ってくれた。
全く垣根を感じない。
 もう誰が誰の親だか子だか分からないくらい、大きな家族の中に入れてもらったような感覚だった。…助けてもらえるかもしれない。
何かが変わり始めた。
ここしかない。直感を信じたかった。

 通っていた幼稚園をやめ、野外保育「まめのめ」へ入園させてもらい、森の近くへ永住する覚悟で引っ越した。
勝手に決めて行動する私を「別人になってしまった!!」と両親は怒り悲しみ、親不孝者!!とののしったけれど、怯える私はもういなくなった。それは、子ども達を自由にできることで、小さな私まで癒やされていったから。
 あの日の私は悪くない。子どもってそんなものだもの。
 思い出したくなかった泣いてる私を、愛子さんが認めてくれたように感じた。
もう傷つかなくていいよ、大丈夫。って抱き寄せてもらえたように、嬉し涙が出た。

 忘れないでいたい。
 子育ては「正しいより楽しいこと」が大切だってこと。苦しかった分優しくなって、この場所でのびのびと生きていきたい。